【脊髄小脳変性症】立ち上がる時にひざ下が揺れてしまう・2つの問題を解決する自主トレ・高橋さんのご質問No1
今日は「脊髄小脳変性症」の高橋さんより、「立ち上がり練習でお尻が上がると膝下が揺れて立てない」というコメントを頂戴しましたので、こちらを取り上げて、2つの原因と自主トレ方法について考えてみたいと思います。
脊髄小脳変性症は、その名の通り「小脳」に障害が生じ、運動失調が出る疾患です。
脊髄小脳変性症は徐々に悪化していき、動き辛くなる脳疾患ではありますが、生死に直接かかる病気ではありません。
また、脊髄小脳変性症はリハビリとの相性が非常によく、厚労省からもエビデンスが出されています。
運動失調の背景に潜む原因を明確にし、リハビリを続けて運動機能を維持すれば、身体活動の後退を食い止めることが期待できます。
脳の変性による進行そのものを食い止めることは難しいかもしれません。しかし、小脳は膨大な神経回路を有していて、その殆どがまだ使われていないとも言われています。
僕たちが日常生活で使っている小脳機能はごくわずかであるため、変性が進んでしまって使えない細胞が増えたとしても、残っている神経細胞には学習能力があるとする研究もあります。
今回は「脊髄小脳変性症」で「膝下が揺れて立てない」という現象に隠れる問題を2つに絞り、それぞれ自主トレを提案してみたいと思います。
問題1:脳由来・協調性の問題
→自主トレ① 構え
問題2:筋の硬さ・長さの問題
誤用によって筋の位置が変わる
→自主トレ② ストレッチ
上記の自主トレを実施する前に、2つ押さえておきたい事があります。
一つ目は、ふくらはぎにある長趾屈筋(ちょうしくっきん)や長母指屈筋(ちょうぼしくっきん)です。この筋群は、指に関連しているため、硬くなると厄介です。
荷重した時に足が外に転げてしまい、わゆる「内反状態」になり、足指がギュっと曲がってしまいます。この筋肉がきちんと伸ばされれば、足指が開いて、フラットに足をつくことができるので、足がグラグラしません。
二つ目は、高橋さんの立ち方です。
僕の想像ですが、もしかすると、立ち座りの時に足裏がベタンと付かず、かかとが浮いてつま先立ちになっているのではと思います。
つま先立ちになってしまう原因は、足のすね付近にある前脛骨筋(ぜんけいこつきん)とふはぎの筋肉の協調性がうまくいかないからではと考えています。
この協調性が上手く行かないのは、脳由来の問題の為です。
「問題1:脳由来・協調性の問題」で指摘した部分ですね。
協調性を得るためには、下部体幹の筋肉が先回りして働く必要があります。これを「先行随伴性姿勢調整(APAs)」と言います。
立ち上がろうとした時、僕たちの全身が足裏に向かって姿勢が調整できるよう、筋肉の準備をしてくれるのが小脳の役目ですが、小脳がうまく機能しないために、動作に先行する「構え(かまえ)」が作られなくなってしまいます。
これとは反対に、(脳由来ではなく)筋に不具合があるのが「問題2:筋の硬さ・長さの問題」で指摘した部分です。
脳からの強調性はある程度確保されているけれども、筋肉が硬かったり、長さが短くなってしまっているために、あたかも協調性が得られなくなってしまっている状態がこれに該当します。
動画後半では、2つの問題それぞれに対処できるような自主トレを案内していますので、チャプターをクリックして各々試してみて下さい。
脊髄小脳変性症の方は、目で代償した方が良いので、足元をしっかり見ながら自主トレを実践するのも重要です。
脊髄小脳変性症は脳卒中片麻痺と同様に、個別要素が大きいですので、YouTubeでの短文のコメント形式のご質問ではなく、ウィルラボの「オンラインリハビリ」をお申込みいただくと、より詳細且つ具体的なアドバイスができます。宜しければご検討下さい。
動画をご視聴頂いている療法士の先生方は、 動きづらさの背景にある問題が、脳由来なのか、代償やバランス不全によるものかを考えながらリハビリメニューを組み立てるように工夫してみて下さい。
動画内容・チャプター
1:16 立ち上がり練習で膝下が揺れてうまく立てない
2:03 死ぬ病気ではない
2:17 リハビリとの相性が良い
3:31 2つの問題:どちらの問題?
6:10 先行随伴性姿勢調整(APAs)
7:10 2つの問題を比較しながら自主トレ
7:17 自主トレ①:構え 手を付くのと同時にお尻が上がる
9:09 自主トレ②:膝蓋骨(しつがいこつ)を下に押して膝を伸ばす
11:11 目で代償した方が良い:足元をしっかり見る
12:00 脳由来なのか、筋の代償によるものかを考える