【片麻痺者が動けないのはなぜ?番外編2】歩行の前に必ず〇〇を確認!バランスのいい歩行練習のやり方・内反尖足とクロウトゥが出る原因

今日は「バランスのいい歩行練習のやり方」という題目で、理学療法士の樫村さんにご協力頂き、脳卒中片麻痺者の方がどうすれば安定的でラクな歩行ができるかをデモンストレーションしていきたいと思います。
文字で読むよりも、実際の動画をご覧頂いた方が早いので、ここではポイントのみ記載します。
YouTube概要欄の「チャプター」から見たい場面に飛ぶことができます。確認しながら実践してみて下さい。
ポイント
⓪事前確認と準備
・関節の可動域や筋の長さを確保
・大転子の位置
・足裏やつま先の曲げ伸ばし練習
(自分の身体の所有感や曲げ伸ばししても怖くない事を体験させる)
①条件
背骨が真っすぐになっている
足底の面積が広く使え、重心が骨盤に対してストンと乗っている
②自然な反応
脚を一歩踏み出せば、身体は勝手に起き上がり、反対側の脚も勝手に前に出る
③勘どころ
足裏がペタンと着くのが重要
片麻痺者の特徴
①条件:背骨が真っすぐ
背骨が歪んだリ、曲がったりして真っすぐになっていない。
麻痺側/非麻痺側のどちらかに傾いて、片方の脚にしか荷重できていない。
股関節が屈曲しているのに、「身体を真っすぐにして下さい!」と言っても、当事者の方はできない。
療法士は、先ずは股関節などが動くように整えてあげてから、真っすぐな姿勢が取れるかどうかを確認する。
片麻痺に加えてOA(変形性関節症)がある方は、膝が真っすぐに伸びないケースがある。膝を真っすぐに伸ばすアプローチ以外に、膝が曲がったままでも、足裏全体に体重が均一的に乗れるポジションが取れるだけで歩きやすくなる。
②自然な反応
当事者の方はご自分の麻痺足の支持性を信頼していない傾向があり、痙縮の影響から、麻痺側を突っ張って振り上げることが多々ある。
脚が突っ張っていると、体重を支えられているように見えていても、実際には足の裏面の非常に狭い範囲しか使えていない事になる。足裏の狭い面やかかとしか使えていないと、バランスが維持できる範囲も限られ、動く時に恐怖感を抱いてしまう。
このため、歩行の自然反応である「勝手に身体が起き上がる」ことが難しくなり、もう片方の脚が自動的に前に出るというのも難しくなる。
③歩行の勘どころ
3-1.支える手
リハビリの平行棒がない場合、椅子の背もたれやテーブルなどで代用可。
片麻痺の方は、恐怖心から平行棒や椅子をギュッと強く握り込む事が多い。握り込むことで安心感は得られるかもしれないが、「手の感覚が歩行を決める」事になってしまうので、あまり好ましくない。
健側の手で軽く支える程度、または、人差し指でちょっと触れる位にしておく。
3-2. 骨盤後傾
片麻痺者の方では、麻痺側の骨盤が後に傾いているのが頻繁に確認できる。
健側の脚を一歩前に出す時、上半身を前方向に斜めにして荷重することが多く、この状態のまま身体を起こそうとすると重心が後方にズレる。
一見すると身体を支えているようだが、実際には支えられていない。
これが恐怖心や違和感の元となる。
アライメントを修正していくためには、お尻が麻痺側に抜けずに、中心に留めておけることが不可欠だが、片麻痺者の方は「下部体幹」と呼ばれる「骨盤と肋骨の間の筋」がきちんと働いていない場合が多い。
そこで、大転子の位置を修正する。大転子を指でつっついて下におろすだけで、下部体幹が働くようになり、荷重感のあるしっかりした足元が作られる。
3-3. 内反尖足とクロウトゥが出る場面
片麻痺の方は、歩行で脚を一歩踏み出した際に、脚の上にストンと身体が乗らない。
自分の身体の位置が定まらず、自分が感じているのとは違う所に実際の身体があるので、強くしがみついたまま、大きく身体を傾けて前に出ようとする。
この時、内反尖足とクロウトゥが出る。
(背屈筋が原因ではない)
3-4. 最初はひきずる形でOK
片麻痺者の方は、底屈・背屈が難しいので、人によっては初回から歩行練習を達成するのは難しいケースがある。
その場合は、下に引きずる程度で構わない。
ズルズル、ズルズルと麻痺足が床を引きずるやり方で問題ない。
下肢装具
足首がちゃんと動くかどうかは下肢装具によっても変わる。
プラスチックのような硬い素材を使っている場合は、この練習は難しい。
どうしても分回し歩行になるが、歩けないよりは、分回しでも歩けた方が良いと考える。状況に応じて工夫が必要。
今回の動画が分かりづらかったり、もう少し補足情報が必要な場合、追加の講義動画も作成したいと思います。療法士の先生方からのコメントやフィードバックをお待ちしております。
動画内容・チャプター
0:22 担当の療法士に見て欲しい歩行練習
0:59 3つのテーマ:条件・自然反応・勘どころ
1:23 ①条件:身体がまっすぐ
2:53 背骨が歪むと体重は片足だけにかかる
4:18 関節の可動域や筋の長さは事前に見ておく
4:36 痙性で脚を突っ張る傾向がある
5:19 ③勘所:足裏がペタンと着くのが重要
6:19 麻痺側骨盤の後傾
7:11 両足を揃えて立った時に重要なこと
7:55 PT樫村さんのケース(歩行モデル)
8:53 左の大転子が後ろに来ている
9:51 大転子の探し方・下におろす
10:28 ②自然反応:勝手に身体は起き上がる
10:39 片麻痺者は前に出した脚に身体が乗らない
11:12 内反尖足・クロウトゥが出る要因(背屈筋が原因ではない)
12:09 最初は下にズルズル引きずればOK
12:19 つま先までの体重移動
13:10 歩行練習の前にすべきこと
14:19 おさらい
15:08 歩行練習のまとめ