硬い身体を柔らかくしても問題解決しない

心身共に高緊張な状態
今日の動画では「心身共に高緊張な状態をどう理解するか」について解説します。
療法士の皆さんは、高緊張の方を対応する事が多いと思います。
心と身体の高緊張は、随意運動もそうですが、自然に立ったり座ったりという何気ない動作に大きな影響を及ぼします。
脳卒中片麻痺の患者さんがクライアントが高緊張である場合、ついつい硬い所をほぐして、柔らかくしようとしてしまいます。
僕が新米OTの頃は、緊張が高くて随意運動が難しい患者さんに対し、リラックスできるよう横になって貰ったり、座位の際に腰やお尻の所に枠を作ったりと、根本的な解決に至らないリハをしていた記憶があります。
体幹をゆるめて柔らかくしてもダメ!?
抗重力活動だと緊張が亢進してしまうので、従重力の活動ばかりに着目して介入していました。
「下部体幹は低緊張なのに、腹直筋はガチガチで緊張してる…」こんな矛盾を現場で抱えながらモヤモヤする日々でした。
当時は、どうすれば良いのか具体的な対処法は誰も教えてくれませんし、問題解決に至るまでのアイディアの組み立て方も分からないままでした。
短絡的に「体幹をゆるめて柔らかくすれば良い」という勘違をしてしまったのですね…
緊張が高い患者さんは、物理的に筋が硬くなっているのに加え、常に気が張り詰めており、精神的にも緊張している事が多いです。
そのような状態の方に、「ゆるめて下さい、だらんとして下さい」と言葉での介入をした所で、いざ動こうとしたら動作がぎこちなく、力ずくになってしまいます。
成果が得られず、自分のアプローチが的外れなので、問題に一歩踏み込んで考えてみる事にしました。発想の転換です。
身体を起こすのに不可欠な体幹筋群を考えてみると、腹直筋、脊柱起立筋、多裂筋、腹横筋、外内腹斜筋のみならず、腸腰筋、ハムストリングスまで含まれます。
様々な試行錯誤の果てに「これらの筋群が程よくブレンドしながら働くことで、自分の姿勢が保てるのではないか!」という結論に至ります。
ここに到達するまでに随分と時間がかかりました。
インナーマッスルは無意識に動く
深部筋と呼ばれるインナーマッスルは自動的には働かず、無意識にしか動きません。脳卒中の方は、脳にダメージを受けているので、ここの制御が難しくなっています。
では、これらの筋群が統合して正常に機能するためには、どうすれば良いのか?
山田が思いついたのは「立ち座り」の練習でした。
立ち座りの動作では、筋群が協調しながら同時に活動しないと、しっかりと体を起こしたり、下肢に体重が乗った後に自然に離臀したりすることはできません。
ですから、立ち座りの練習では、自動的にこれらの筋肉が統合して働いてる事を、僕たちセラピストはちゃんと理解しておかないとダメです。
高緊張だから動かずに単純にリラックスさせたり、緩めるのではなく、『ラクに自然と動けた結果、自分の身体が戻ってきた!』という体感を得る事こそが重要なのです。
上記に基づいてリハをする際、神経学(脳機能)・運動学・解剖学など、基礎学問の知識が必要なのは言うまでもありません。
そして、知識をベースに、実際の臨床現場でどう解決策を組み立てていくのか。
思考プロセスや考え方の道筋を示しているのが、先月上梓した「Let's ケーススタディ 脳卒中リハビリテーション 」です。宜しければ是非読んでみて下さい📚
12月15日から全国セミナーも開催されます。
気になる方は是非お近くの会場をお申込み下さい。
動画内容・チャプター
0:35 姿勢緊張・姿勢筋緊張
1:45 随意運動以外は自動的な制御
1:57 全身的な高緊張(肉体的にも精神的にも高緊張)
2:34 硬い身体は柔らかくすれば良いと思い込んでいた
4:43 全身が高緊張とはどういう状態か
6:04 筋肉の硬さ
6:55 気持ちの面でも緊張が高い
7:48 体幹筋を考える
11:18 横になる時も適切な姿勢緊張がある
12:21 どういったら筋群がバランスよく働くのか
12:34 インナーマッスル(深部筋)は無意識にしか動かない
14:27 立ち座り練習
15:41 動いた結果、自分の身体が認識できる
16:19 脳機能・解剖学・運動学
17:26 出版記念セミナー
20:02 メインチャンネル1万人達成