【Case File2】小脳出血・象皮病様の難治性浮腫と右上下肢の失調症状

今回は「小脳出血による運動失調と難治性の浮腫み」ついて症例紹介します。30年程前の症例で、山田が療法士になりたての頃のエピソードですが、象皮病様の難治性浮腫をどう改善に導いたのか、「習字」という意外なリハビリに行きつくまでを、順を追って解説していきたいと思います。

・鼠径部の通過障害に対する先入観と思い込みからの失敗
・金曜勉強会を通じたインプットとアウトプット
・出現している症状と背景の再整理
・効果的なリハビリの考案

上記のプロセスを解説していきます。

今でこそ当たり前になった「構え(かまえ)の形成」や「先行随伴性姿勢調節(APA)」、「内部モデル」などの概念ですが、30年程前は一般的ではなく、リハ業界でも殆ど知られていませんでした。

僕自身、動画中で言及している「金曜勉強会」(病院内で夜に2時間ほど開催されていた勉強会)で教えて貰った事や学んだ事も多く、現在の治療でも大いに活用している事が沢山あります。

今回の動画も情報量が多く、色々な用語が飛び交いますが、小脳疾患の代償が複数ある事は、療法士の先生は抑えておかれると良いと思います。

①低緊張による不安定性への固定代償
②運動失調による揺れへの固定代償

固定代償から難治性edema(イディーマ・むくみ)が生じていると仮説立て、勉強会でのアドバイスから、習字をやるという発想に繋がりました。
習字をしながら動作の開始・終了・切り替えを患者さんに理解・獲得して貰うのです。

表面的なテクニックではなく、金曜勉強会を通じた実践的な情報交換や深いディスカッションに加え、臨床の現場で「なぜ?なぜ?」を繰り返し自問した事がアイディアの創出に繋がったと考えています。

今回の症例では、最終的に「習字で横一本を書く」というリハビリに至りましたが、習字そのものの活動ではなく、「習字という活動を通して小脳機能にアプローチしたお陰で、固定が緩和し、通過障害が改善され、浮腫が改善した」と僕は理解しています。

習字以外にもっと効率的で効果の高い方法があるかもしれません。
何か良い案をお持ちの療法士の先生がいらっしゃいましたら、是非コメントに書いて下さいね!

動画内容・チャプター

1:24 療法士になりたての頃の症例
1:52 鼠径部の通過障害を治せば良いと思っていた…
3:15 小脳出血による運動失調は言葉では理解していたが
4:09 金曜勉強会
5:21 健側左手で食事をすると浮腫が悪化
6:51 ①構えの形成→APA's(先行随伴性姿勢調節)
7:48 低緊張による不安定性への固定代償
11:00 運動失調による揺れへの固定代償
11:52 内部モデルによる出力の自動化→学習に繋がる
13:15 習字の練習「横一本の美学」
16:13 一ヵ月後の変化