【Case File3】下部体幹の低緊張 理論と実践・感覚フィードバックに基づく効果的な介入

下部体幹低緊張への具体的な介入
脳卒中片麻痺者へのリハビリに際し、療法士が「下部体幹の低緊張がある」と評価しつつも、具体的にどう介入し、改善するかというレベルにまでは至っていないということを臨床の場で見聞きしています。
今でこそ、こんな風に言っている僕自身、下部体幹の低緊張がなぜ起こるのかを理論化し、自身の臨床技術として身に付けるまでに相当の時間を要しました…ので、あまり偉そうに言える立場ではありません。
今日の動画では、山田が臨床2年目の頃に経験した、下部体幹低緊張に対する介入の失敗談をもとに、その理論と実践を簡単に動画でご紹介したいと思います。
僕が作業療法士になりたての頃、脳卒中片麻痺は「手足の麻痺」なのに、体幹を使う寝たり起きたりの動作がなぜできなくなってしまうのか、ずっとモヤモヤしたものを抱えていた時期がありました。
そん中、体幹に対するアプローチを師匠や先輩から教えて貰うわけですが、「どうして下部体幹の低緊張が起こってしまうのか」といった理屈を一切考えず、表面的な模倣を繰り返していました。
知識や経験がなく一生懸命だった訳ですが、とにかく早く答えが欲しくて、成果を出したい気持ちでいっぱいで、ただ闇雲に骨盤の前後傾の練習を患者さんにさせてしまった事がありました。当時の僕に一発殴ってやりたい気分です。
今でこそ、座位で骨盤を前後傾する「形だけのリハビリ」が無意味であるのがハッキリ理解できます。しかし、自分が若手セラピストの頃は全くその原理を理解していませんでした。
腹部の重要な筋群
腹部のユニットを作るのに重要な役割を果たすのが、腹横筋・横隔膜・骨盤底筋・多裂筋です。腹直筋・腹斜筋・腸腰筋もそれらが機能するのに欠かせない筋群です。
これらが正常に働かなくなってしまう背景には、脳梗塞・脳出血の発症初期に起こる脳のダメージが一つの例として挙げられます。
脳圧が亢進し、脳の内側から頭蓋骨に向かって浮腫んだり、出血による圧迫が生じます。すると、小脳や脳幹にも圧が加わるので、障害が発生する事があります。
これが「下部体幹の低緊張」という現象となって出現していると考えています。
脳幹や小脳機能を改善させるのが重要
本来なら、発初期に脳圧が亢進している場合、早いうちに脳圧を正常化させ、早急に脳幹や小脳機能を改善させることが介入として必要なのですが、この事を考慮しながらリハビリ介入しているセラピストは少ないように思います。
脳幹や小脳を介したフィードバック回路とフィードフォワード回路の不全や固有受容感覚が小脳に送られないといった神経回路の障害を改善するには、「感覚フィードバック」を使い、反応しているかを確認する必要があります。
リハビリの「形」としては、座位での骨盤の前後傾ですが、本当に注目しなくてはいけないのは姿勢調整なのです。骨盤が起きた時に、感覚が坐骨結節の後ろから大腿、足底に繋がりますよっ….という一連の感覚・反応に基づく姿勢調整が自然に生じないと下部体幹は働きません。
骨盤の前後傾による「姿勢調整・重心変化・姿勢緊張変化」といった抗重力活動が自然にできるよう促す必要があるのです。
また、忘れてならないのは、下部体幹は「非麻痺側」にも問題があるケースがあるということです。
詳細な介入方法に関しては、実技形式の講習会ではないと伝えきれないので有料となってしまいますが、今回の動画では山田がお伝えしきれる範囲で情報発信してみました。
全体を通じて伝えたいことは、「対象の方片の方が、自分で勝手に動ける体を作らなきゃいけないんだよな」ということです。
今回紹介した介入の場面では、当事者がどういうフィードバックをこちらに返してくれたか、どういう反応を示してくれたか、どういう結果になったかを判断することになります。
「判定基準」は、次回の動画で解説する予定です。
動画内容・チャプター
1:52 山田が臨床2年目の話(ボバースとの出会い)
4:30 座位での体幹練習の失敗談
6:10 座位バランスの練習の失敗談
7:21 下部体幹の低緊張が起こる理由
8:31 脳梗塞・脳出血の発症初期
12:02 フィードバック回路:脳幹から小脳への固有受容感覚
12:25 遠心性コピー:大脳脂質から脳幹への運動指令信号
13:35 骨盤の前後傾:骨盤を起こす際の感覚に基づいた姿勢調整
15:53 急性期・亜急性期における長下肢装具を用いた荷重練習
16:35 下部体幹は非麻痺側にも問題があるケース