トボトボ歩きと不安定性・高緊張が緩められない理由とは

※前回の予告(脊髄小脳変性症の遂行機能について)とは異なったケースを紹介しています。10月23日に脊髄小脳変性症例を配信します。期待していた方、ごめんなさい。

左視床出血 右片麻痺 50代女性

今回の症例では、左視床出血右片麻痺の50代女性を取り上げます。
アキ子さん(仮名)は、歩行の祭の歩幅が狭く、いつも怖そうにしながらとぼとぼ歩くのが特徴的な方でした。

高緊張が認められるので、通常は緊張を取るのを優先しますが、高緊張の背景に潜む原因が分からなかったので、先ずは徒手的に緩められないか介入する事にしました。

ところが全く緊張が取れず、むしろ緊張が強くなるような状態に陥ってしまい…
施術後でも相変わらずとぼとぼ歩きで帰宅される姿を見て、大変申し訳なく感じていました。

それ以来、彼女の事はずっと気に留めていたのですが、後になって、ある仮説がパッと思い浮かびました。

"右片麻痺によって肩甲帯を調節できないために足が動かない、つまり、下部体幹の適切な緊張状態を作り出す練習が足らなかったのでは!?"

「下部体幹の緊張を生み出すための練習」を考えるにおいては、身体全体の仕組み、もっと言えば、小脳機能まで立ち返って戦略を組み立てる必要があります。

小脳機能に介入

小脳機能に介入するとは「基本動作」を練習し、再獲得して貰う事を意味します。
内部モデルを小脳に学習させたり、思い出して貰ったりする手順がカギになります。

■小脳の働き
1.内部モデル≒運動記憶
2.フィードバック誤差学習
3.構え(含む先行随伴性姿勢制御:APAs)
4.タイミング測定

視床出血だからと言って小脳機能を考慮しないと、脳システムの重要な役割を見落とす事になると考えます。

歩行や上肢の痙性の問題に対しては、ついつい手足に直接介入しがちですが、その根本にあるコンポーネントや身体の使い方、脳機能まで思考を巡らせ、「手足が自由に動かせること」に深く入り込んでいくのが重要!…と、だいぶ後になってから気づいたという山田の失敗談でした。

動画内容・チャプター

1:32 猫背気味で高緊張
2:55 ①歩幅が狭く、怖そうに歩く
4:07 ②筋緊張を徒手的に緩められない
5:21 高緊張の理由:山田の仮説
6:37 肩甲帯を調節できない
7:46 下部体幹の緊張を作り出す練習が足らなかったと後から気づく
8:07 先行随伴性姿勢制御(APAs)
10:22 小脳機能に介入(基本動作の再獲得)
12:38 視床出血でも小脳に影響が及ぶ

①歩幅が狭く、怖そうに歩く
②筋緊張を徒手的に緩められない
③小脳機能に介入する必要性があった