小脳性認知情動症候群を深掘り・前頭前野への介入から扁桃体を抑制して小脳の学習機能を取り戻す!

脊髄小脳変性症と小脳性認知情動症候群

前々回の動画で取り上げた「小脳性認知情動症候群」を「脊髄小脳変性症」の症例を通じて深掘りしてみたいと思います。

小脳や脳幹は脳出血や脳梗塞による浮腫により圧迫されると、一時的に機能が低下することが知られています。脳幹に圧が加わると、たとえ脳幹そのものが障害されていなかったとしても、脳幹機能がダメージを受けることがあります。

脳幹のすぐ横にある小脳により、低緊張が起こることも知られていますが、その詳しい原因は分かっていません。

このような背景を踏まえた上で、山田の臨床体験を重ね合わせると、「小脳性認知情動症候群」の現象が詳しく考察できそうだと思い至り、ここ数年は個人レベルで臨床データやエビデンスを蓄積してきました。

これは単なる臨床現場での思いつきや偶然の産物ではなく、「脳機能」や「解剖学」の基礎知識の上に成り立っています。

「小脳が学習機能を維持している限り、日常動作行為の再獲得は可能」というのは皆さんもご存知かと思いますが、そこに行きつくまでには、認知機能が正常に働く必要があります。それが、小脳性認知情動症候群の問題の根幹と捉えています。

前頭前野を活性化

山田が担当した脊髄小脳変性症のクライアントは、強い恐怖感を訴えており、どう動いて良いか分からないという状況だったので、小脳性認知情動症候群の併発の可能性を疑いました。

そこで、前頭前野を活性化させることで扁桃体の過活動を抑制し、小脳の学習機能が働くような介入を試みました。

最初に実際した「寝返り動作」では効果的な結果が得られなかったので、「膝立ち」のリハビリを通じて認知機能を高め、小脳の再学習を促したことで恐怖感を取り除きました。

最終的に「こういう感覚だったのよね!」とおっしゃって頂くことができ、「恐怖」という情動から、「動けるかもしれない」というマインドの変化に繋げることができました。

山田は常に「セラピストは臨床科学者だ!」という想いを抱いてリハビリに取り組んできましたが、それを表す一例が今回の症例だと思いご紹介しました。

Let's ケーススタディ 脳卒中リハビリテーション

そして、脳卒中リハビリテーションにおける僕の知見と技術を、「臨床ケーススタディ」としてまとめた一冊を11月に三輪書店より発売する予定です。

2024年11月9日・10日に札幌で開催される「第58回日本作業療法学会」のブースにも出展し、自身も現地入りする予定です。
学会に参加予定の療法士さんは、会場で見かけたら気軽に僕に声をかけて下さいね!

■山田稔 新書:Let's ケーススタディ
第58回日本作業療法学会 2024年11月9日/10日 書籍ブースにて
https://www.c-linkage.co.jp/ot58/

■三輪書店:Let's ケーススタディ 脳卒中リハビリテーション 〜
『日常生活』を視野に入れた介入の考え方〜
https://shop.miwapubl.com/products/detail/2795

動画内容・チャプター

0:45 脳卒中による脳幹・小脳のダメージ
1:47 小脳性認知情動症候群で痛みを訴える方(介入拒否する人)
2:20 セラピストは臨床科学者
4:35 失調運動失調や振戦などの運動障害はリハビリとの相性が良い
5:38 小脳の出入力システム
小脳が学習機能を維持している限り日常動作行為の再獲得は可能
6:18 小脳性認知情動症候群 問題の根幹
7:31 前庭小脳:身体のバランスを保ち、運動や姿勢を安定させる役割を担う
8:34 脊髄小脳システム:体幹筋と四肢運動コントロールを担う
9:13 大脳小脳システム:運動の結果、目標との誤差情報を受け取る
効率的で無駄のない、スムーズが動きを実現
9:49 山田が担当した脊髄小脳変性症の方(発症約3年)
13:19 小脳性認知情動症候群の可能性(恐怖感)
13:44 偏桃体の過剰反応
15:39 前頭前野を使う→小脳に働きかける
19:20 前頭前野による抑制作用で扁桃体の過活動を抑制
20:35 前頭前野により扁桃体が抑制できると小脳の学習機能が働く
21:44 山田の新書「ケーススタディ」三輪書店より発売