臥位での安定面を探す・横になっても全身が緊張して腕が曲がる原因

痙縮・形成麻痺への具体的介入

本日から痙縮・形成麻痺について山田なりの解釈や仮説に加え、実際の介入場面について解説していこうと思います。

何度かシリーズでお伝えしていく予定ですが、初回の今日は「内観」をどう使いこなすかについてお話しようと思います。

臥位での安定面を探す介入場面を撮影し、その解説を加えていますので是非ご覧ください。

さて、今回のケースファイルで取り上げた片麻痺の女性は、麻痺手がずっと曲がったままで、臥位になった時も同じ状態で、非麻痺側の手ですら硬く握り込んでいる状態です。

こうした状況で先ずやりがちな事は、麻痺手を緩めることです。しかし、目に見える現象は「痙性麻痺」でも、「どうして曲がってしまうのか」をじっくり考察してみることは臨床上とても有用と思います。

上手に寝られない

同時に、僕は作業療法士ですから、生活行為として「上手に寝られない」という側面にも注目すべきと考えます。
介入動画からも分かるように、横になってもリラックスして寝られないというのは自明で、臨床1-2年目の方でも容易に評価できるポイントと思います。

動画の女性が、真横になっているにも関わらず手が曲がってしまっているのは何故か…それを分かりやすく表現した例として「片方の手で木の枝に捕まっている状態」をあげました。

足場が悪く落っこちそうな所を、手で木の枝に捕まって何とか自分の身体を保っている状況です。

このような環境にずっとあると脳が興奮するので、全身の筋緊張が高くなり、それが痙縮として出現しているのでは…と僕自身は仮説立てています。

「内観」をフル活用する

解決策としては、この強い緊張感が抜ければいいワケです。そのために使ったのが、「両足が地面に着いて落っこちない、大丈夫!」という安心感や安定感を得る「内観」という手段です。

内観をすることで脳が過剰興奮しているのを抑制し、高い緊張状態をなだめるのが可能となります。その結果、麻痺手に直接介入をしなくても、身体が楽に下ろせるようになれば、手は勝手に緩みます。

痙縮の発生メカニズムは未だ解明されていませんが、上記で説明した一連の流れで考えてみると、下記のように整理でるのではと推察しています。

・姿勢緊張がうまく制御できなくなった麻痺側の身体は、地面に着いていても分からない
・物理的に地面に接していても、姿勢調整が起こらなくなっているため、ずっと高緊張のまま自分の姿勢を保とうとしている

『代償的に自分の身体を一定の位置に留めておこうとする反応が痙性』と解釈すれば、解決に向けて「姿勢制御」に着目したリハビリが組み立てられます。

脳卒中により姿勢制御の機構が障害されているのだとしたら、練習課題は「手の使い方」ではなくて「姿勢コントロール」です。これをしないと手足は緩んで来ない…と見立てることもできるでしょう。

「内観」を駆使した実際の介入場面と解説を公開していますので、療法士の方の参考となれば嬉しいです。

動画内容・チャプター

0:41 第58回日本作業療法学会・作業療法のフィールド
2:52 介入シーン:臥位で安定面を探す
3:45 介入解説
4:30 現象は痙性麻痺だが緩める前に理由を考えてみる
4:56 曲がる理由と生活行為の2つの側面から捉える
6:13 臥位で腕が曲がる理由
8:13 内観
8:43 介入シーン:身体が楽になる介入(内観実例)
10:49 介入解説
12:17 麻痺手に介入をしなくても身体が楽におろせるようになれば手は勝手に緩む
12:47 痙縮仮説:姿勢緊張が制御できない
15:36 このアイディアはずっと持ち続ける