動けないってこういうこと!

山田稔 ぎっくり腰になる
みなさん、こんにちは!山田です。
先週の火曜日に、ぎっくり腰になりました💦
夜にストレッチをやっていたら、いきなりなってしまいました。
1~2日経てば少し動けるかなと楽観的に構えていたのですが、3日経っても動けず…
こりゃどうしようもないやと思って整形外科に行きました。
「圧迫骨折でもしてるのか」と少し心配になりましたが、レントゲン撮影したところ、異常はなしでした。
ただし、腰椎は相当ねじれていました。
骨盤が右にねじれているせいで、右側の骨盤が狭くなっているようです。
恐らく、左側の腹斜筋群がうまく働かないせいで、右側を過用(オーバーユーズ)していたのが、何かのきっかけて緩んだか何か分からないですが、スパズムが起こってるんじゃないかなということでした。
■スパズム:
・筋肉が意図せずに収縮すること
・血管が縮んで細くなること
最初は両手が自由に動かず、手で支えていないと腰が痛んで起きていられませんでした。
パソコンを操作するのも困難で、動画編集ができませんでしたが、何とか今週の配信も問題なく完了しました。
個人的なぎっくり腰の経験をこのまま放置しておくのも勿体ないので、「姿勢制御とぎっくり腰の関係」から『脳卒中片麻痺者の方の姿勢制御は一体どうなっているんだろう』というテーマで動画を撮影しました。
脳卒中片麻痺者は姿勢制御が障害されているのか?
「姿勢制御」に関しては前回の動画でも講義しましたが、我々は姿勢制御を先行的に行うことでバランスの崩れを防ぎ、自分の身体を自由自在に操っています。
脳卒中片麻痺の方が、動き辛かったり、歩くのが大変だったり、代償的な活動パターンになったりしてしまうのは、いわゆる「マヒ」のせいなのででしょうか。
勿論、そうした背景のひとつに「痙性麻痺」が関与しているケースもあるでしょうが、僕としては「姿勢制御」の問題が大きく関係していると考えています。
姿勢制御の中枢
姿勢制御の中枢は「脳幹」と「小脳」です。
脳幹と小脳が何らかのダメージを受けると、姿勢制御が障害されます。
一方で、被殻出血や視床出血、中大脳動脈梗塞など、脳幹や小脳よりも上に位置する脳部位が侵されても、本来であれば姿勢制御は障害されないはずです。
しかし、脳血管疾患を起因とする脳の炎症や浮腫によって脳内圧が亢進し、大脳皮質を圧迫すると、一時的にせよ脳幹や小脳に障害が生じることがあります。
すると覚醒度が悪くなったり、協調運動障害が生じたりします。
こうやって考えると、脳卒中片麻痺の大半の方で、姿勢制御そのものは阻害されていないと考えることができると思います。
姿勢制御システムの不具合
「姿勢制御そのもの」は阻害されていないくても、「姿勢制御システム」に不具合が起きているというのに着目して、考えてみます。
「姿勢制御システム」には「前庭系」と「網様体系」の2つがあります。
前庭系と網様体系
前庭系は平衡感覚を調整するシステムで、網様体系は姿勢制御を行うシステムです。
前庭系と網様体系は、どちらも姿勢制御に関与しています。
■前庭系
・伸筋をコントロールする(抗重力伸展活動)
・内耳の前庭迷路、眼球、頸部などの情報を判断して、平衡感覚を調整する
・運動や運動に伴う姿勢を安定的に保つ働きをする
・転びそうになった時など、頭部の傾斜に反応し、頸部や四肢の抗重力筋の緊張を高め身体を起こす役割を担う
■網様体系
・体幹と両上下肢の近位筋の協調的な運動や姿勢を制御する
・抗重力筋の調整も行う
→歩行時の体幹の安定性に依存しているため、この経路がしっかり機能しているかどうかがバランスの安定性に直結する
立ち座りでは網様体系がメインに
立ち座りの動作では、網様体系を沢山使うと言われています。
関節の動きや中間位で止まる、どっちの方向に行こうか、どの位の力で調整すれば良いのかというのを調節しているのが網様体系の働きとされています。
阻害因子を取り除く
前庭系が伸筋を制御して、抗重力伸展活動を可能にしているので、伸筋が働かない事には、前庭系も機能しません。
仮に前庭系が働いていたとしても、肝心な筋肉が弱っていたら、上手くいきません。
網様体系は関節運動に深く関わっているので、肘が硬くなっていたり、片手症候群で肩回りが炎症で強い痛みがあるといった状態では、網様体系はフル稼働しません。
仮に網様体系が機能を保持していたとしても、立ったり座ったり、腕を伸ばしたりといった動作は難しくなります。
「姿勢制御とは別の要因」から、結果的に「姿勢制御がうまく働いていない」という状態を『姿勢制御システムの不具合』と理解したら良いでしょう。
こうした『姿勢制御システムの不具合』では、やるべきことは姿勢やバランスを取る練習ではなく、「阻害因子を取り除く」ことです。
阻害因子を取り除くべき場面とは、正に今僕が置かれているぎっくり腰の状況です。
今僕は仙腸関節や中殿筋が動こうとすると非常に痛くなります。
動こうとすると痛いという事は、先行的な姿勢調節や予測的な筋活動ができないということです。
動こうとすると痛みに繋がるので、今僕の体幹筋は働いていません。
脳卒中片麻痺の方と同じ状況です。
適切な姿勢制御の練習
阻害因子を取り除きながら、適切に姿勢制御が働くような練習をすることが、脳卒中片麻痺の方のリハビリでは求められていると考えています。
極端な例になりますが、これがある程度できれば、上下肢の随意性が多少悪くても、日常生活に復帰できると思っています。
我々セラピストには、姿勢制御の阻害因子を見極めて評価し、どう対応するかの臨床スキルが求められるのです。
関連動画
【片麻痺者が動けないのはなぜ?⑦】内反尖足とクロウトゥはバランスが原因・脳が損傷すると感覚入力・加工・出力に問題が生じる
https://www.youtube.com/watch?v=gb61rTD5ovU
【片麻痺者が動けないのはなぜ?番外編2】歩行の前に必ず〇〇を確認!バランスのいい歩行練習のやり方・内反尖足とクロウトゥが出る原因
https://www.youtube.com/watch?v=9yCiV5-evyk
動画内容・チャプター
0:32 ぎっくり腰になりました
1:00 レントゲン:圧迫骨折はしていないが腰椎がねじれている
2:00 ぎっくり腰の経験から姿勢制御を解説
2:41 脳卒中片麻痺者は姿勢制御が障害されているのか?
3:57 姿勢に依存して動作を遂行している
4:44 姿勢制御の中枢:脳幹と小脳
5:26 被殻出血や視床出血などは脳幹と小脳は損傷されないが…
5:54 脳の炎症によって脳内圧が亢進→大脳皮質を圧迫する
脳幹小脳に障害が生じる
6:17 片麻痺者:姿勢制御そのものは阻害されていない
6:36 姿勢制御システムの不具合(前庭系と網様体系)
6:50 前庭系システム:伸筋をコントロール(抗重力伸展活動)
7:14 網様体系:近位筋・抗重力筋の調整
→立ち座りは網様体系を沢山使う
7:58 伸筋が働かないと前庭系は機能しない
8:44 システムの不具合→阻害因子を取り除く
→姿勢やバランスを取る練習ではない
10:14 ぎっくり腰でも姿勢制御は障害される
11:03 上下肢の随意性が悪くても日常生活には戻れる
12:02 姿勢制御の阻害因子の評価・対応技術が求められる