【脳卒中という病気と後遺症の片麻痺を徹底的に理解する⑤】脳の働きに関わる3つの要素・脳はシステムとして働いている・できない動作を獲得するばかりが運動練習ではない

【まとめ・ポイント】

・病気の特性を知ることが回復の可能性につながる
・単なるあきらめではなく、正しい知識を持った上でリハビリのアプローチや考え方を変えることが大切

・「動作練習=できないことを繰り返す」だけではない
・“なぜできないのか”を理解しながら行うことが重要
・練習の方向性や質によって成果が大きく異なる

・脳は“システム”として動いている
・麻痺や運動障害の原因は必ずしも「運動神経(皮質脊髄路)」のダメージだけではない

【脳の働きに関わる3つの要素】

①身体図式の再構築(ボディイメージ)
・自分の身体がどこにあるのか、どうなっているかを脳が認識している仕組み・概念
・頭頂葉の働き:
 ‐どこに触れられているか、熱い・冷たいなどを判断(感覚把握)
 ‐自分の手や足がどこにあるか、どのように動いているかを認識(空間把握)
 ‐筋の協調運動や物の認識(高次機能)
 →この頭頂葉に「身体図式」という概念があると考えられている
・麻痺によって感覚が脳に届かなくなると「手足が存在しない」ように感じる
 →動作の再獲得にはリハビリを通じた「身体図式の再構築」が必要!
・身体図式は脳卒中発症から1ヶ月程度は残っていると言われている

②脳活動の均一化
・右脳が損傷すると左脳が過剰/過少に興奮してしまう
・左右の脳のバランスを整えないと、動作がギクシャクする
 → 安心して動けるようになるためには、脳の過剰・過小興奮を安定させることが重要

③期待が生む脳のやる気スイッチ(基底核の働き)
・基底核は強化学習を担う部位で、「報酬」に反応してオン・オフを切り替える
・オフだと動作にブレーキがかかり、動けなくなる(たとえ麻痺が軽くても)
 → 「できるかも」「できた!」という“期待感”が基底核を活発化させ、動作を促すことに繋がる
・元の生活に戻れそうだという前向きな気持ちの源泉に

【全体のおさらい】

・動作練習は、単純に動かすだけでなく、自分の身体の存在を再認識し(身体図式)、脳の活動を安定させ(活動の均一化)、期待感で脳のスイッチを入れる(基底核)という脳のシステム全体を再構築するプロセスと捉える

・繰り返し練習するだけではなく、練習の意味と質を考えることで、動作が再びできるようになる可能性が高まる

・「脳卒中=麻痺で終わり」ではない。脳の仕組みを理解し、適切なアプローチをすれば、『まだ動ける可能性』は残っており、改善できる余地はある

動画内容・チャプター

0:29 できない動作を獲得するばかりが運動練習ではない
0:53 練習によって何が変わるから動作ができるようになるのか
2:13 運動障害はマヒが原因ではない
3:51 脳はシステムとして働く
5:42 関与しているシステム3つ
6:09 ①身体図式の再構築
9:06 できない動作を獲得するだけではなく、自分の身体を再認識する
9:29 ②脳の均一化
13:30 ③基底核の報酬系
14:22 期待感は絶対必要
15:32 脳はシステムとして働く