【片麻痺者が動けないのはなぜ?麻痺側上肢④】弛緩性麻痺側上肢の復活を語り尽くす!マヒ手の8割は動けるようになる・末梢の出力を無視するのが問題

今日の動画では、麻痺側上肢の復活を語りつくします!
結論は「8割以上の方のマヒ手は動く」という事です。

昔のように100%の動きには戻らないかもしれませんが、「動かない」と思っていた手が動き出す。今よりも改善する。
僕が長年の臨床経験から確信していることです。

15:58 から、包帯を使った「指先が対象物に触れる感覚」を活かしたリハビリ方法を紹介しています。

今回の動画も本題や結論に入る前が長く、まとまりに欠けたり、話が脱線したりしていますが、当事者の方はもちろん、山田と同じ作業療法士(OT)の先生方に是非聞いて頂きたい内容です。

言いたい事/まとめ

・脳卒中片麻痺において、8割以上の方のマヒ手は動くようになる
・キーファクターは指先の感覚と対象物との関わり
・「肘を伸ばす」では伝わらない
・先行随伴性姿勢制御(APAs)は目標志向(指向)
・自分の手が動きそうという心を生み出すのが大切
・赤ちゃんが歩き方を1年かけて学ぶように、対象物との関わりが回復への道
・脳の再結合・可塑性は確実に存在する
・包帯を用いた感覚練習が効果的
・指を動かそうとしないで、包帯を動かす

マヒ手が動かない理由は「末梢の出力」を無視しているから

脳卒中片麻痺の上肢リハビリにおいて、「肘を伸ばして」と言われた経験がある方は多いと思います。療法士がリハビリでやろうとしている事は理解できますが、当事者の方の立場からすると「実際にどうやって肘を伸ばすの?」という疑問や歯痒さが常に付きまといます。

「肘を伸ばす」とはとても曖昧な表現ですし、専門的な筋肉名を言われてもピンとこないし、感覚として掴みにのが実情です。

ここで重要なのが、「末梢(手先)の感覚」や「出力(動かすための刺激)」を軽視してはいけないということです。

まずは姿勢を整え、下部体幹がしっかり働ける状態をつくり、そこから手先の練習へ移行するのがポイントになります。

“肘を伸ばす”は分かりにくい!じゃあどうする?

「肘を伸ばす」と言っても、実際には同じ肘の動きでも筋肉の働き方が違うんです。

上腕三頭筋の外側頭・内側頭・長頭ではそれぞれ役割が違い、「伸ばす」と言ってもその裏では複雑な動きが起きています。

ではどうやって肘を伸ばせばいいのか?
答えは「肘を伸ばす」ではなく「指先で物を動かす」という意識を持つ事。

脳卒中後の麻痺からの回復には、「動かし方を考える」のではなく「対象物を操作する」ことが非常に重要な考え方になります。

自主トレ案:包帯を使って指先に刺激を入れる

今回ご紹介する自トレは、「巻いた包帯」を使った練習です。

・手順:
良い姿勢で座る:お尻の坐骨を感じるように、体幹をしっかり立てる。
ラップの芯やハーフポールをお尻の下に敷くのも有効です。

・麻痺手をテーブルに預ける:
この時点でまだ無理に広げる必要はありません。

・指を伸ばすコツ:
人差し指を「引っ張る」のではなく、「下から引っ張り出す」ようにそっと動かしてテーブルに置く。

・包帯を人差し指の下に置く:
包帯の上に指が「ちょん」と乗る程度でOK。ここで感覚を感じることが大事。

・練習開始:
指を動かすのではなく、「包帯を動かす」意識。ちょっと押してみたり、コロコロ転がしたりする。

・ここが重要!:
指を動かそうとしないで、物を動かす

動かす対象があるからこそ、動作は自然に起きる

これが、僕たちが赤ちゃんの頃に学んできた動作の再学習プロセスです。

人間は生まれたときには歩けません。でも1年後には立って歩けるようになります。

これは「歩く能力がDNAに刻まれているから」ではなく、1年かけて対象物と関わりながら動きを学習しているからです。
赤ちゃんが1年で立てるようになるにはこのような背景があります。

同じように、脳卒中の後遺症によるマヒ手も、対象物と関わることで脳に刺激が入り、神経の回路が再結合していくんです。

目標志向=心と志向

「志向」という言葉。辞書を引くと「志す」と書いてある。つまり、心がその方向を向いているということです。

麻痺手を動かすには「動いて欲しい」という心、そして「対象物を操作したい」という意志が大切だと個人的に考えています。

先日の動画に登場頂いたソムリエの石橋さんも、当初は「手なんか動かないよ」と信じ込んでいました。
しかし、指先で包帯を動かしてみることで「先生、手動いてますね」と実感できたのです。

これが回復の突破口です。

麻痺は治らない。でも改善はできる

僕はずっと「麻痺は治らない」と言ってきました。
なぜなら壊れた脳細胞は再生しないからです。

でも、脳には「可塑性(かそせい)」があり、新しい神経回路を作ることはできます。

麻痺は改善できる。動かなかった手が動くようになる。
これは科学的に証明された事実です。

熱くなってしまいましたが、僕の想いを伝えたく、麻痺側上肢の復活を語り尽くしてみました。

動画内容・チャプター

0:41 結論:8割以上の方のマヒ手は動く
1:57 マヒ手改善のプロトコル・方程式は存在する
2:15 末梢の出力を無視するのが問題
2:42 肘を伸ばすとは?
3:23 上腕三頭筋に力を入れるとは?
5:12 肘を伸ばすというイメージでは伝わらない
6:13 末梢に注目するのが重要
7:07 タオルでテーブルを拭く作業の意義が不明
9:02 脳卒中による細胞は復活しないが可塑性がある
10:09 可塑性はどうやったら実現できるか
11:28 「指先」がキーファクター
12:41 生後1年間練習しなければ歩けるようにはならない
13:29 先行随伴性姿勢制御(APAs)は目標志向(指向)
15:10 手先・指先が対象物に触れる
15:44 自分の手が動きそうという心
15:58 包帯を使ったリハビリ案
16:45 背中を張るのではなく腰が起きる
18:10 コツ:指を伸ばす時には人差し指を先に手の下から引っ張り出す
18:50 包帯を人差し指の下に入る
20:11 包帯を動かす(対象物に手を伸ばす)
20:44 APAsによって下部体幹が働き姿勢調整がコントロールできる
21:18 上腕三頭筋も働く
22:00 麻痺側上肢は8割以上の方が動くようになる
22:50 マヒ手が改善し脳神経の繋がりは復活する
23:29 感覚運動練習:末梢の感覚に対して物を動かす