【脳卒中の後遺症を理解する④】急性期・回復期・維持期で持っておきたい視点・FIM評価の妥当性と当事者個人の機能最適化
脳卒中の後遺症を理解するシリーズ4回目も、前回に引き続き、山田の考えを少し皆さんにシェアしますね。
とある病院での「臨床指導でのエピソード」をもとに、脳卒中発症後の急性期・回復期・維持期(生活期)で共通概念として持っておいた方が良い視点について個人的見解を述べたいと思います。
2016年度診療報酬改定により、脳卒中リハビリテーションを取り巻く環境は大きく様変わりしました。
「患者の早期の機能回復を推進する」ことを旗印に、厚労省が回復期病院に『アウトカム評価』を導入し、患者の社会復帰を早期化するための、生活機能に関するリハビリの評価を新設・厳格化しました。
脳卒中患者の日常生活動作(ADL)を評価するひとつの指標として、「FIM(機能的自立度評価表)」が各病院で導入されるようになりました。
FIMは日常生活を営む上で必要となる最低限の動作で、食事・排泄・入浴・更衣・整容などが網羅されている評価表です。
脳卒中当事者の方なら、回復期病院で何度か評価を受けた事があると思います。自宅退院の目安として、運動項目のFIMスコア70点程度が指標とされています。
厚労省によるアウトカム評価やFIMの設立の背景には、膨張する国民医療費の抑制が大きな要素として存在すると思われます。加えて、早期退院を実施した病院に対する加算など、色々な事情・思惑があるのかもしれません。
「FIM」が目標とする「機能的自立」が、必ずしも「脳卒中当事者の機能の最適化」には結びつかないケースもあるのでは…というのが山田個人の意見です。
このチャンネルで何度もお伝えして来ていますが、脳卒中という病気は個別性が大きく、後遺障害も時間経過と共に変化していきます。
①脳卒中になると何が起こるのか
②脳卒中で脳機能が低下するとどうなるのか
(脳機能とは何か)
上記を踏まえた上で、急性期・回復期・維持期(生活期)それぞれの状態がどういったものなのかを見越した対処が必要なのではと、経験上感じています。
急性期・回復期・維持期(生活期)における脳や身体状況がどういったものかを予見・理解しておけば、それぞれのステージに見合ったレベルで、患者本人や家族への状況説明や声掛け、リハビリプランの策定ができるのではと思っています。
各ステージの状態や基礎的な考え方を知らないがために、FIMとのミスマッチが生じてしまったのが冒頭のエピソードの原因かもしれません。
急性期で認知機能や意思疎通がまだ不安定な方に対し、FIMの点数を上げようとするがあまり、「ズボンの脱ぎ履き」を練習させるといった、本末転倒な事態を引き起こしてしまったのではと推察しています。
FIMに固執してしまったが故に、その方個人のニーズを汲んだり、身体機能の最適化を図る視点が欠けていたのではと。
動画でご紹介したエピソードは、あくまでも山田の個人的体験に過ぎず、回復期リハビリテーション病棟の全てがこのような状態という意味では決してありません。
我々療法士は技術を習得するのは勿論重要ですが、「技術で解決できないこと」も沢山あります。
プロトコルとしてマニュアル化できないこと、データ化できない事の方が多いかもしれません。その場その場の人間関係の中でしか機能を活かせない事もあり、ある種の属人的な部分がリハビリテーションの究極的な姿なのかもしれません。
2024年の「ウィルラボのリハビリ講座」の配信は本日が最終です。
次回は、2025年1月5日に配信予定です。
皆様、どうぞ良いお年をお迎えください🎍⛄
■アウトカム評価の導入
2016年度診療報酬改定では、質の高いリハビリテーションを評価し、患者の早期の機能回復を推進する。回復期リハビリ病棟入院料でアウトカム評価を導入したほか、初期加算、早期加算の要件厳格化。社会復帰に向けた、医療機関外での生活機能に関するリハビリの評価を新設した。
※m3.comより引用・抜粋
https://www.m3.com/news/open/iryoishin/398952
■FIM(Functional Independence Measure)
FIM=機能的自立度評価表
リハビリテーションや介護の現場で、患者の日常生活動作(ADL)を評価する手法。
日常生活を営む上で必要となる最低限の動作で、食事・排泄・入浴・更衣・整容などが含まれる。脳血管疾患患者の自宅退院の目安として、運動項目のFIMスコア70点程度が指標とされている。
動画内容・チャプター
0:23 脳卒中による後遺障害
1:04 様々な誤解
1:46 急性期・回復期・維持期の共通概念
2:41 臨床の指導でのエピソード
6:20 厚労省:リハビリテーションのアウトカム
7:01 FIM=機能的自立度評価表
9:13 脳卒中は個別差が大きい
10:46 ①脳卒中になると何が起こるのか
11:57 急性期の状態・考え方
3:35 脳卒中発症=マヒ 短絡思考の危険性
14:40 ②脳機能とは何か
16:16 急性期に持つべき視点
17:56 回復期の状態・考え方
20:25 回復期のFIM評価は妥当か
20:46 維持期の状態・考え方
21:22 後遺障害は時間経過と共に変化
24:36 療法士へのメッセージ
27:03 国民医療費40兆円超
28:28 次回は2025年1月5日配信予定