【抗重力伸展活動と多重感覚】歩き始めると腕が曲がってしまうのは、立つ時と足を振り出す時の姿勢保持に問題があるから? 芦屋の若松さんのご質問No2

先週配信した芦屋の若松さんから返信コメントを頂戴し、「歩き始めに腕が曲がる」という事でしたので、今回も続きを撮影していこうと思います。

僕は若松さんのお身体を直接見ていないので、推察や仮説になりますが、僕のクライアントの「ちゅんたご飯粒さん」が若松さんと似たような症状を抱えていらっしゃるので、ちゅんたさんの状況も踏まえながら、バランス機能や姿勢調整を軸に考え方の例をお伝えしていきます。

脳幹損傷ではバランス障害が生じる傾向があります。
若松さんの場合、非麻痺側でも身体をしっかり起こしておくことができない可能性があるかもしれません。

因みに、ちゅんたご飯粒さんは、立ち上がった時に麻痺手はダランと下りているのですが、いざ歩き始めようと思った瞬間にギュッと腕が曲がってしまいます。

ここで覚えておきたいキーワードが「抗重力伸展活動」です。

僕たちの身体には、歩き出そうとした瞬間、振り出した足とは反対の足で体重を支え、緊張状態を高めて、自然と身体を起こす機構が備わっています。

この適度な緊張状態(抗重力伸展活動)が作り出せず、反対側の足に荷重移動する前から別の足を上げてしまうので、身体が倒れそうになります。そうしたアンバランスな状態を代償的にカバーするため、麻痺手をギュッと硬くしてムリヤリ支えている…現象が生じているようです。

対処法の一つの例として、「多重感覚」により「抗重力伸展活動」を補ってあげるという考え方があります。

多重感覚は姿勢調整に関わる感覚で、前庭感覚・視覚・体性感覚があり、これらが統合・協調して働くことで姿勢調整が保たれると考えられています。

具体的なリハビリとして、椅子の背もたれにちょっと手をかけたり、麻痺側の脇にタオルを挟むといった方法があります。

何からの理由で、非麻痺側で身体起こすための筋緊張に変化が出ないので、別の感覚(多重感覚)を入れた上で練習を重ねたら、麻痺手が曲がってしまう症状も緩和されるのではと仮説立てています。

まとめると、手の問題ではなく、「立っている時の姿勢保持と片足を前に出す時の姿勢保持がうまくいっていない」ということですね。

今日は「姿勢調整」を軸に、「抗重力伸展活動」や「多重感覚」など、基礎理論について少しややこしいお話を致しました。

来週の動画では、僕のラボに通って頂いている、ちゅんたご飯粒さんとのやりとりも織り交ぜながら、リハビリや自主トレをご提案できればと考えています。

動画内容・チャプター

0:20 若松さんからの返信コメント:歩き始めに腕が揺れる
1:33 足を前に出す時、別の足で一定の姿勢が保てる必要がある=バランス
2:11 脳幹損傷ではバランス障害が生じる
2:30 非麻痺側でもしっかり身体を起こしておくことができない
2:39 ちゅんたご飯粒さんの例(脳幹梗塞)
3:15 抗重力伸展活動
4:14 椅子に少し手を触れておく
4:32 多重感覚(前庭感覚・視覚・体性感覚の統合)
6:28 麻痺側の脇にタオルを挟む
8:27 手の問題ではない
立つ時の姿勢保持と片足を前に出す時の姿勢保持がうまくいっていない可能性。別の感覚を入れると良いかも。

要点

  1. 歩き始めに腕が曲がる
  2. 非麻痺側での伸展が不足している
  3. 多重感覚

姿勢調整には多重感覚が重要

a.前庭感覚
b.視覚
c.体性感覚