【腕が上がらない立ち座り練習・勘どころ】 体性感覚に注意を向ける自主トレ・芦屋の若松さんのご質問No3

前回に引き続き、芦屋の若松さんからのコメントにお答えする形で、歩く時に手が曲がってしまう現象とその原因を考察していきたいと思います。

若松さんからは短文のコメントしか頂いておらず、具体的な身体状況が分からないままなので、今回は僕のクライアントである、ちゅんたご飯粒さんの解説を踏まえながら、実際の介入場面をご覧頂ければと思っています。

歩行時に腕が曲がってしまう背景として、様々な可能性が想定されます。
運動失調がある場合、痙縮が強い場合、前庭感覚の過敏…など、原因によって運動練習や介入の方法は変わってきます。

ちゅんたご飯粒さんの場合は、痙縮が強く、前庭感覚が過敏なタイプの方です。

動こうとすると、興奮が高まり、手がぐーっと曲がってきてしまいます。
また、立ち上がろうとした際に、首の緊張がクンと入ってしまいます。
転倒に対する恐怖感が先に立ってしまうので、とにかく早く体を起こしたくなり、焦って首から起き上がろうとしているのです。

この背景のひとつに、先の前庭感覚の過敏があります。

両下肢にきちんと荷重できず、倒れそうな感覚に陥るので、非麻痺側の足に力を入れて、強引に身体を起こそうとする強い反応が出てきてしまいます。

ちゅんたご飯粒さんへのリハビリ介入のポイントは、「体性感覚に注意を向ける」ことです。

詳細は介入場面を見て頂きたいですが、「体性感覚に注意を向ける」には、お尻を通って足の裏に体重が移っていく時の感覚に注意を向けるのが大切です。

座っているところから、立ち上がる際には姿勢が変わります。
姿勢変化を生むためには、「感覚入力」と「運動出力」の両方が必要です。
運動練習では「運動の形の再現」だけに関心を払うのではなく、ご自身の「感覚」に注目してリハビリを行う意識が不可欠です。

身体がラクに動ける「感覚」を捉えて、"立ち座りの勘所"を得られるようになれば、動作の運動出力はパッと出てくる。僕たちには、このような身体機能が備わっているのです。

この動画を視聴されている療法士の先生方は、介入場面で山田が自分の手を介してクライアントの固有受容感覚にどう刺激を入れているのか、どんな声掛けをしているのか、何をもって目標達成としているのか…を掴み取って頂ければと思います。

痙性をコントロールする立ち座りのコツとして、脳が部分的に過剰興奮している事実を踏まえ、筋肉が硬くならないように誘導していくのを常に心がけて下さい。

感覚が得られないままムリヤリ動作練習するのではなく、どこだったら感覚が分かるのか、どこだったら感覚が探せるのか、探査していくのが療法士としての腕の見せ所です。

「立ち上がり動作が早くできる」なんてのはどうでもいいです。

むしろゆっくりと、「ああ!何かすごく軽く動けた!」とか「身体が硬くならなくて済んだ!」という体験を獲得しながら、ある程度自由に動けるようになるのが大事です。

動画内容・チャプター

1:20 若松さんの場合
2:10 ちゅんたご飯粒さん:痙縮が強く前庭感覚が過敏
3:31 体性感覚に注意を向ける
6:12 脳卒中片麻痺者:感覚と運動の問題を抱える
7:40 ちゅんたご飯粒さんの介入動画
16:33 解説再開:丁寧にやるのと療法士の声掛けが重要
17:28 痙性の抑制→脳の過剰興奮をなだめる
19:27 坐骨結節に乗る感覚:力を入れなくても起き上がれる
21:11 筋肉の硬さをなだめて自由に動けるのが目標
22:02 立ち座りで手が緩んだ状態→歩く準備として必要
22:57 新書のご案内:Let's ケーススタディ

芦屋の若松さんのご質問No1
https://www.youtube.com/watch?v=BAumjWt0oSc&t=134s

芦屋の若松さんのご質問No2
https://www.youtube.com/watch?v=Hd1FdOHA098&t=6s